精神科の入院ってあんまりイメージが湧かないな、、、
入院に種類ってあるの??
そうですよね!
精神科の入院は本人や家族が同意できるか、自傷他害の危険がないかなどの状況に合わせて5種類の入院形態があるんです!
なんか難しそう、、、
いざ何かあった時に、入院のこと少し知っておくと安心して治療ができると思います。なるべく、わかりやすくお伝えできるように頑張ります!!
精神科入院の種類
精神科の入院は下の図のように大きく5種類に分かれています!
少し複雑なので、細い部分に興味ない方は、最後のまとめだけ見てみてください!
任意入院
本人の同意に基づく入院のこと(精神保健福祉法第20条)
精神科入院の最も基本となる入院形態です。精神保健指定医の診察は必要なく、患者と医師が合意の上で、書面による本人の同意の意思確認を行います。
普通の入院(一般科の自由入院)と精神科の任意入院は何が違うの?
一般科の入院には入院の種類はなく自由入院のみです。
任意入院は同意に基づく入院であっても、精神保健福祉法上の要件を満たす場合、行動制限や退院制限(72時間に限る)を受ける可能性があります。自由が制約されうる点で自由入院とは違います。(5)
退院はいつできる?
基本的には本人が自分の意思で入院しているので
・本人が退院したい場合
・症状が改善して医師が退院可能と判断した場合
は退院できますが、精神保健指定医が診察をして、入院を継続する必要があると判断した場合は72時間に限り退院を制限することがあります。
(退院制限の例)
入院中に調子が悪くなり「家に帰って死にたいから退院させてほしい」といった場合、「任意入院だから帰っていいですよ」とはできません。初めは任意入院でも、症状や状態に応じて、入院形態を変える可能性があります。
医療保護入院
精神保健指定医が入院が必要だと判断したけれど、本人の同意を得られず、家族等が入院に同意した場合(精神保健福祉法第33条)
家族等:配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人、いずれも各当者がいない場合は市町村長
家族といっても、本人との関係性は色々あると思うけど、それでも同意できちゃうの?
精神保健福祉法では医療保護入院の同意をすることができない場合を定めています。
① 行方の知れない者
② 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、またはした者ならび にその配偶者および直系血族
→例えば本人に妻が離婚起訴を提起している場合など
③ 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人
④ 成年被後見人または被保佐人
⑤ 未成年者
ただ、現行法の限界もあるので、患者と家族の関係性を確認し、患者と利益相反関係のある家族から同意を得るのは医療者側が回避をする必要があります。
応急入院
精神保健指定医が緊急の入院が必要と判断したが、本人及び家族の同意が得られない場合に72時間を限度として行われる入院。(精神保健福祉法第33条)
実際には、72時間で治療が終わることは難しく、72時間以内に家族等の同意を得て医療保護入院に切り替えることが多いです。
措置入院
自傷他害の恐れがある場合に本人・家族の意思に関わりなく都道府県知事の権限で行われる入院(精神保健福祉法第29条)
これは上の3つの入院形態とは大きく異なり、行政措置としての入院になります。
2名以上の精神保健指定医が診察を行い、自分を傷つけたり、他人に危害を及ぼす可能性があるため入院が必要であると判断した場合に、都道府県知事の権限により行われる行政的な入院です。つまり、本人や家族が入院に反対しても、知事の命令で入院することになります。(7)(8)
自傷他害ってどういうこと?
自傷=自分の生命や身体を害する行為
他害=他人の生命、身体、自由、貞操、名誉、財産等に害を及ぼす
と定義されてます。(9)
例えば、ロープで首を絞めて自殺しようとしたり、混乱して他人を殴ってしまい怪我をさせたりといった行為が含まれます。
どういう流れで入院になるの?
例えば、「ビルから飛び降りようとしている人がいます」と警察に連絡が入り、保護されたとします。そうすると、警察が自傷他害の危険性があると判断すると、保健所を通じて都道府県知事に通報(23条通報)します。その後、2名以上の精神保健指定医が診察を行い(措置診察)、2名とも一致して「措置入院の必要がある」と判断した場合(要措置)に、措置入院が行われます。
緊急措置入院
緊急を要する自傷他害の危険があり、措置入院と同じ手続きをすぐに取ることができない場合に72時間に限定して行われる行政入院(精神保健福祉法第29条)
措置入院と同じ正規の手続き(都道府県職員の立ち会い、精神保健指定医2名以上の診察など)ができないため、精神保健指定医1名の診察で入院が決定します。
これはあくまで緊急の対応なので、72時間を超えて入院が必要な場合は、あらためて正規の手続きを踏み、措置入院に切り替わるか、他の医療保護入院や任意入院に切り替えて治療を行います。
まとめ
本人の同意 | 家族の同意 | 指定医の診察 | 入院期限 | 入院権限 | |
任意入院 | あり | 必要なし | 必要なし | 精神病院管理者 | |
医療保護入院 | なし | あり | 1人 | ||
応急入院 | なし | 72h以内 | |||
措置入院 | 必要なし 自傷他害の恐れ | 必要なし | 2人以上 | 都道府県知事 | |
緊急措置入院 | 1人 | 72h以内 |
5つの入院を表にするとこのような感じになります!
このように精神科の入院は、本人そして周りの人を守るために精神保健福祉法という法律に則って入院が行われます。
法律が絡むためやや堅苦しい説明になってしましましたが、人権にも関わるため、細かく定義や要件が決まっています。
一般の方が、細かい定義を覚える必要は全くないですが、なんとなく、同意が得られるか、自傷他害の危険があるかなどによって入院の形式が違うんだな〜っと思っていただければ、いざ自分や大事な方が入院することになった時に、慌てずに済むかもしれません。
ぜんぜん知らなかった。なんか複雑なんだね。
でも何となく知っておけば、何かあった時に落ち着いて行動できそう。
参考文献
(1)大阪精神医療人権センターの 面会活動の具体的内容:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001226178.pdf
(2)精神保健研究所70周年記念事業,こころの情報サイト,精神科の入院について:https://kokoro.ncnp.go.jp/support_hospitalizatio.php
(3)五稜会病院理事長 中島公博,精神科病院における入院形態とは(精神保健福祉法に基づく入院):https://goryokai.com/files/libs/2316/202304290536023601.pdf
(4)厚生労働省,医療保護入院制度について:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000115952.pdf
(5)精神保健福祉の法律相談ハンドブック,新日本法規
(6)「精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」報告書|厚生労働省ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000099530.pdf
(7)措置入院の運用ガイドライン,千葉大学社会精神保健教育研究センター 治療・社会復帰支援研究部門 特任准教授 椎名明大:https://jngmdp.net/wp-content/uploads/2019/08/sochi02.pdf
(8)公益社団法人, 日本精神科病院協会,精神科医療ガイド,精神保健福祉法の解説:https://www.nisseikyo.or.jp/guide/psychiatry04.php
(9)厚生労働省 こころの耳:https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1887/
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