生理前ってイライラするし眠くなるし、嫌になっちゃう
生理前の不調といえばPMSが有名ですが、正しく知っていますか?
今回は、PMSについて学んでいきましょう!
PMS とは
月経前の黄体期(排卵後から月経までの約14日間)にのみに発現し、月経直前にピークを呈し月経発来と同時に消退もしくは消失する。症状として、身体または精神症状のうち 1 つ以上存在する
(国際疾病分類ICD10より作成)
症状は大きく分けると心と体の2つあります。 (産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023参照)
- 心の不調:抑うつ、怒りの爆発、イライラ、不安、混乱、社会的引きこもり
- 体の不調:乳房の張り、腹部膨満感、頭痛、関節痛、筋肉痛、体重増加、四肢のむくみ
疫学
日本では女性の8割程度が月経前になんらかの症状があるとされています。生活に支障が出るほどのPMSは5.4%程度。PMDD は月経がある女性の 1.8~5.8% という報告もあります。(1,3)
原因
はっきりとは分かっていないですが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられています。月経前は、エストロゲンとプロゲステロンが急激に低下するため、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こしている可能性があります。(3)
対処法
軽症の場合は、生活習慣の改善から行います。
気分症状が強い場合は抗うつ薬、ホルモン療法などの薬物治療も検討されます。
今回は、薬物治療、認知行動療法、生活習慣の3つをご紹介します。
薬物治療
①抗うつ薬
SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という分類に含まれる抗うつ薬が推奨されています
(ACOG guideline: ACOG Guideline: Management of Premenstrual Syndrome and Premenstrual Dysphoric Disorder – The ObG Project)
②ホルモン療法
OC(経口避妊薬)やLEP (低容量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)などがあり、排卵を抑制することでPMSの症状緩和を期待できます。
③漢方
「東洋医学的には瘀血と気の異常より生じると考えられるため,加味逍遥散を中心に検討すると使いやすい.ほかに,当帰芍薬散,桂枝茯苓丸,桃核承気湯,抑肝散,抑肝散加陳皮半夏,香蘇散などがあり,症例に応じて使い分けるとよい」と大坪は報告しており(1)薬に抵抗がある方は、まずは漢方を試してみても良いかもしれません。
④ハーブ
ハーブの1 つである Vatex agnus(または Vitex agnus,セイヨウニンジンボク,チェスト ツリー)は欧州で PMS や月経関連障害に広く使 われてきました。2014 年 4 月から初の PMS 治療薬(プレフェミン®)として日本でも発売されています!
CBT (認知行動療法)
抗うつ薬の一つであるfluoxetineとの比較研究では、PMDD患者に対し、fluoxetine単剤,CBT, 両者の併用の 3 群で比較した結果、いずれも有意に症状の改善がみられ、即効性は fluoxetine が優位であったが,症状改善の維持に関しては CBT が優位であったと報告されており、CBTの有効性が確認されています。(1)
日本では認知行動療法を受けられる医療機関はまだあまり多くはありませんが、興味のある方は、以下のサイトから各地域で認知行動療法を行っている医療機関を探してみてください。
<認知療法・認知行動療法の届出医療機関一覧>
北海道:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_hokkaido.pdf
東北:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_tohoku.pdf
関東:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_kantou_shinetsu.pdf
東海:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_tokai_hokuriku.pdf
近畿:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_kinki.pdf
中国四国:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_chugoku_shikoku.pdf
九州沖縄:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/cbt_kyushu.pdf
また、最近は「Awarefy」などアプリでできる手軽な認知行動療法もでてきているので、まずはそこから試してみるのも手かもしれません。
生活習慣
次は、生活習慣で気をつけることをご紹介します!
食事
血糖値が大きく変動するとイライラが悪化することもあります。血糖値の変動を減らして感情を安定させましょう。
血糖値を急激に上げる食品(単糖糖質:果物、ジュース、菓子、酒など)をさけ、ゆっくり吸収されるもの(複合糖質:ご飯、パン、麺を意識的に摂取してみて下さい。食事は抜かずに規則正しい食事を目指しましょう。
刺激物を避ける
生理前はカフェインやアルコールの摂取は控えましょう!
生理前はプロゲステロンの働きで体温が上がり、眠気が出るため、コーヒーなど飲みたくなる方もいると思いますが、飲み過ぎには注意しましょう!カフェインは覚醒作用があるため、交感神経の刺激によりPMSの精神症状が悪化する可能性もあります。
夕方以降はカフェイン摂取を控えたり、飲む量を1日2〜3杯にする、ノンカフェインで代用するなどの工夫もお薦めです!
ビタミン・ミネラルをしっかり摂取する
ビタミンD、ビタミンB、マグネシウム、亜鉛、鉄分といった成分はPMSの症状を緩和させるという報告があります。(5)
運動
有酸素運動は PMSの予防や症状軽減に役立つという報告があります。(6)
体が辛いときは無理はしないほうが良いですが、少し動けそうな時は、好きな音楽を聴きながらお散歩などどうでしょう?
まとめ
- PMS/PMDDはホルモンバランスの変動による生理前後の心・身体の不調である
- PMSは女性の8割が経験するとされる
- 対策としてはまず生活習慣の改善(食事、運動)や認知行動療法を行い、改善しない場合は薬物療法(抗うつ薬、ホルモン療法)なども選択肢になる
生理だからしょうがないと我慢せず、産婦人科、精神科・心療内科、カウンセラーなどに相談してみて下さい。適切な治療を行うことで、毎月の辛い時間が少しでもハッピーになるかもしれません。
参考文献
1 )精神科からみたPMS/PMDDの病態と治療 東京女子医科大学東医療センター精神科 大坪天平https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/22/3/22_258/_pdf
3)月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) – 公益社団法人 日本産科婦人科学会
4)PMS,PMDDの診断と治療、昭和医大学医学部産婦人科学口座 白土なほこ 小ウィア学士会誌第77巻第4号(360-366貢,2017)OMShttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/77/4/77_360/_pdf/-char/ja
5)栄養精神医学からみた女性のメンタルヘルス、医療法人山口病院、奥平智之https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/28/2/28_192/_pdf/-char/en
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