「不安」な気持ちには誰でもなります。
しかし、不安が強すぎたり、ずっと続くと日常生活にも支障がでてしまいます。
それでは、そもそも「不安」はどのようなメカニズムで生じるのでしょうか?
今回は不安について深掘りしていきます!
不安のメカニズム
扁桃体という脳の部位が不安を感じるメカニズムの中心的な役割をしています。
五感で受け取った情報が扁桃体に届くと、それが命に関わるものであるかを一瞬で評価します。危険と判断されると扁桃体は視床下部や脳幹に信号を送り、自律神経系・内分泌系に影響を与えます。それによって、心拍数や血圧の上昇、筋肉緊張が起こり、動悸や手足の震えといった症状(情動反応)や、不安や恐怖といった感情が発生します。
扁桃体が過剰に反応すると些細なストレスでも強い不安を引き起こすことがあり、このような場合、理性的な思考を行う前頭前野の働きが抑制され、結果的に不安や恐怖の感情が強化されてしまいます。
恐怖と不安の違いは?
精神科においての言葉の違いとしては、不安=対象のない漠然とした恐れであり、恐怖=特定の対象に対する恐れの感情のことを指します。
そんな違いがあったのね!
不安は 「未来を想像する能力の代償 」とも言えます。恐怖は直接的な脅威に対する反応であるのに対し、不安は、先に起こりうる否定的な結果に対する反応です。不安と恐怖はどちらも同じ扁桃体を経由する神経回路を利用しており似ていますが、不安に特有の要素は、将来の否定的な結果を想像する能力です。過剰な不安は想像力に苦しんでいる状態と考えることができます。
不安な時のセルフケア
不安な時に、自分ですぐにできて効果が報告されているセルフケアを3つご紹介します!ぜひ試してみてくださいね。
深呼吸
深呼吸を行うことで、副交感神経が刺激され、リラックスすることができます。(8)
不安が強くなると呼吸が速く浅くなっていることがあります。そんな時は目を瞑って、まず心の中で「1、2、3」と数えなからゆっくり口から息を吐きましょう。吐きながらお腹をへこませ、吐ききったらまた「1、2、3」とゆーっくりお腹を膨らませながら鼻から息を吸いましょう。それを何回か繰り返してみましょう。
運動
多くの疫学的研究や実験研究によって,運動は小から中等度の不安軽減効果があると報告されています。定期的な運動はより効果的ですが、一過性(1回)の運動でも不安軽減効果が確認されています。(9)
もしお家にいて、なんとなく不安で落ち着かない時は、少しお散歩してみるのもおすすめです。外に出るのはめんどくさいかもしれませんが、気になってたパン屋さんに行ってみたり、好きな音楽を聴きながら少し歩いてみてはどうでしょう?頑張って外に出てみると、意外とリフレッシュできます!空を見上げるといい天気で心地よい風が吹いてきたりします🎵
音楽を聴く
市場調査会社マインドラボ・インターナショナルは、参加者の脳活動をモニターしながら、難しくストレスのかかるパズルを完成させるという研究を行いました。その効果を調べるため、パズルを解いている間に音楽を流しました。
その中でひときわ効果が見られた曲がありました。調査によれば、イギリスのアンビエント・ミュージック・バンド、マルコーニ・ユニオンの 「Weightless」は、
最低心拍数、達成された最低呼吸数、達成された最低EDA参加者のストレスを65%減少させたという報告があります。
この曲は、バンドが英国サウンドセラピー・アカデミーとともに、リスナーをリラックスさせるために作ったもので、人間の安静時の心拍数である60BPMで、ハーモニーや音の“間”は幸福感をもたらすように設計されているそうです。
もちろん、この曲でなくても良いですが、ゆったりとしたリズムのお気に入りの音楽があれば、座ってリラックスし、音楽を楽しんで見て下さい。
まとめ
今回は「不安」のメカニズムと簡単なセルフケアについてご紹介しました。
本来は、不安や恐怖は生存本能として重要な感情ですが、現代社会での仕事や人間関係など多岐にわたる要因によって生まれた過剰な不安は心の健康に影響を及ぼすことがあります。
不安のメカニズムを知ると、今自分のなかで何が起こっているか分かり、少し客観的に自分の状態を見れるかもしれません。不安がでてきたら「あぁ、わたしの体は未来のあの事に対して備えようと頑張っているんだな」と思ってあげて下さい。
落ち着かない時は、ご紹介したような簡単なセルフケアも試してみて下さい。
不安が強くて辛い時は、我慢しないで、医療機関や地域の保健所、精神保健福祉センターなどに相談して下さいね!誰かに相談するだけで落ち着くこともあります。
参考文献
1)Northwestern Medicine :The Science of Anxiety (Infographic) | Northwestern Medicine
2)東邦大学理学部生物学科 生物学の新知識:ストレスと脳 | 生物学科 | 東邦大学
3)Micah Abraham, BScHow the Amygdala Affects Anxiety
4)The Biology of Anxiety | Psychology Today
5)書く瞑想「ジャーナリング」とは?書く瞑想「ジャーナリング」とは?やり方・お題例、アプリやノートの活用方法まで徹底解説 丨コグラボ- Cognitive Behavioral Therapy Lab
6)キナリノ心を整えるシンプルなメソッド。書く瞑想「ジャーナリング」を試してみない? | キナリノ
7)こころの健康がみえる第1版,編集:医療情報科学研究所,発行:MEDIC MEDIA
8)Magnon, Valentin et al. “Benefits from one session of deep and slow breathing on vagal tone and anxiety in young and older adults.” Scientific reports vol. 11,1 19267. 29 Sep. 2021, doi:10.1038/s41598-021-98736-9
9)青木邦男,運動の不安軽減効果及びうつ軽減効果に関する文献研究
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